2012年1月12日木曜日

『前衛の遺伝子』の読みどころ


明日は初めての著書が本屋に並ぶ。気になって仕事が進まないのだけれど、書籍という形で見ると、もはや自分が書いたものとは思えなくなる。まさに作品というのは作者から離れたものだということを、改めて実感している。同時に、作品というのは作者の子どもみたいなもので、少しでも多くの人の手に渡って長生きして欲しいという気もする。
だから、著者ゆえに自画自賛になるけれど、出来るだけ多くの手にとって貰えるように、主な読みどころのいくつかを紹介したい。もちろん、読者の関心によっては、このほかにも読みどころは色々あるはずだ。

2012年1月11日水曜日

目次 『前衛の遺伝子 アナキズムから戦後美術へ』


足立元『前衛の遺伝子 アナキズムから戦後美術へ』(ブリュッケ 20121月15日発行)
〈目次〉


序 近代日本の前衛芸術と社会思想
はじめに
「爆発」の系譜とアナキズム思想
共産主義の台頭とアナキズムの伏流
ファシズムにおける前衛芸術の可能性
本書の構成

1章 大逆事件と美術——小川芋銭の漫画から——
明治国家の終わりと一つの始まり
美術史、社会思想史、漫画史の重なるところ
明治期社会主義誌への美術家たちの関わり
小川芋銭の初期漫画作品 新聞・雑誌・漫画集
小川芋銭と俳画
坩堝としてのアール・ヌーヴォー:老荘思想、超越主義、アナキズム
大逆事件による挫折とその後

2章 大正アナキズムの芸術運動——望月桂と黒耀会の人々——
前衛芸術のもう一つの源流
忘れられていた黒耀会
望月桂の生い立ちと平民美術研究会
黒耀会の結成
黒耀会の演劇と機関誌
第一回黒耀会展
第二回黒耀会展
民衆芸術展
黒耀会の作品傾向
黒耀会の後——『漫文漫画』と理想大展覧会
望月桂と黒耀会の今日的意義

3章 三科をめぐる革命のヴィジョン
大正期新興美術運動における「心」の問題
爆弾の造形・爆発のメタファー
三科の結成と分裂 革命のヴィジョンの諸相
1.木下秀一郎 アナキズム的自由連合をめざして
2.大浦周蔵 共産主義を奉じつつマヴォと確執
3.村山知義 美術から建築、そして階級闘争へ
4.岡田龍夫 アナキズムも共産主義も破壊
5.岡本唐貴 アナキズム、ニヒリズムからボルシェビズムへ
6.柳瀬正夢 アナ・ボルの止揚からボルへ
7.横井弘三 革命のヴィジョンの変質を見抜いた無欲
曖昧なイデオロギーから生じるもの

4章 プロレタリア美術とエロ・グロ・ナンセンス
周縁=境界にある漫画
プロレタリア美術運動内部のエロ・グロ・ナンセンス
プロレタリア美術を利用した梅原北明
プロレタリア美術にはまり込んだ下田憲一郎
崇高なイデオロギーと変態的な欲望

5章 反シュルレアリスムの美学 ——『原理日本』にみる前衛芸術弾圧の思想的背景——
「前衛」の登場と撤退
シュルレアリスム弾圧再考
ファシズムの美学 『原理日本』と田代二見
皇国主義的日本美術史観
反グロテスク、和歌の生命主義
超「個性」主義の帰趨

6章 大東亜のモダニズム ——丹下健三《大東亜建設記念営造計画》をめぐって——
前衛芸術とファシズムの建築
帝冠様式/様式としてのモダニズム
帝冠様式と丹下健三の戦犯化・戦犯解除
新様式の新しさ--《大東亜建設記念営造計画》
新様式の現実化 《在盤国日本文化会館計画》
「大東亜建築様式」を求める議論
対西欧としての「大東亜」
「大東亜」イデオロギーにおけるユートピアの創造

7章 占領期の前衛芸術をめぐる統制と分裂
禁忌されてきた占領期
三つの問題設定
表現の統制——描かれなかったものと例外的作品——
占領軍資料からみる前衛芸術への監視
1. 検閲体制
2. プランゲ文庫
3. 『占領軍治安・諜報月報』
引き裂かれた前衛芸術——占領期の前衛美術会をめぐって
1. 前衛美術会の設立と分裂
2. 前衛美術会の作品
3. 東宝争議と前衛美術会
4. 世紀から前衛美術会へ 分裂を引き受けて
冷戦の新たな前線へ

8章 1950年代の前衛芸術における伝統論争
「日本」の再テーマ化
建築史と美術史の伝統論争
イサム・ノグチ旋風
ノグチの日本美術観から伝統論争へ
ノグチをめぐる言説と作品
主役の交代へ
伝統論争の収束とそれが残したもの

結 前衛の遺伝子
原理のモデル構造として


あとがき

主要人名索引